中田監督からも、今後の全日本の中心を期待された。



しかし、その期待とは裏腹に掛かるプレッシャー。


 特に同じパスヒッターである古賀紗理那選手と何かと比べられ、胸中穏やかではなかったかもしれない。

全日本の新たなエースへの道を突き進む年下のライバル。


皮肉にも古賀選手の故障とともに巡ってきたチャンス。

これからも二人は良きライバル。

笑顔が弾ける石井優希選手。

スマイルこそ彼女のトレードマーク。


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しかし、今年はやや湿りがちだった。


 2016年リオデジャネイロオリンピックにも駒を進めた石井選手。

比較的順調なステップを踏むも、もうひとつ伸び悩んでいた。

チャンスのきっかけは2013年。


江畑幸子選手が腰痛でグラチャンの前半戦を棒に降る。

そこで抜擢された石井選手はオポジットに起用され、開幕戦のロシア戦でベストスコアをあげ、一躍注目を集める。

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これでチャンスを掴んだ石井選手は2013/14Vプレミアリーグでサーブ賞にも輝きチームの優勝に貢献。
期待は膨らむ。

石井選手は持ち味のパワフルなアタックとサーブ、そしてどこでもこなせる自在性で全日本に定着する。


しかし、当時はパスヒッターとして木村沙織、新鍋理沙選手がレギュラー、点取り屋として江畑幸子選手、そしてハイブリッド6にてセンターのポジションとして迫田さおり選手と同期の長岡望悠選手が台頭。



サイドアタッカーは狭き門だった。



パスヒッターとして起用されるにはサーブレシーブを磨く。

Vプレミアリーグで徹底的にサーブレシーブを磨いた石井選手の前に、更なるライバルが出現。

それが高校卒業まもなく、内定選手ながら早くもNECレッドロケッツの優勝に貢献した大型ルーキー・古賀紗理那選手。


ファイナルで狙われた石井選手は得点力を削られ敗退。三連覇を逃す。



木村沙織選手の再来と言われる古賀選手は2015年、ワールドグランプリで華々しいデビューを飾ると、ワールドカップでは早くもエースとして活躍。





遅れてきたライバルを前に、石井選手の奮闘が始まる。


翌2016年、リオデジャネイロオリンピックイヤー。

2015/16シーズンにて石井選手はリーグ最多の899本のサーブレシーブを受け、ランキング4位。東レの快進撃を追撃。ファイナル6では3連敗という崖っぷちから這い上がり、3位で通過したファイナル3。
リーグ史上に残る東レとのフルセットの死闘を制しファイナルへ。この試合で石井選手は長岡選手に次ぐ17得点を上げて奮戦。

迎えたファイナルではこの年苦戦した日立リヴァーレに第一セットを奪われ苦しい展開。第二セットの接戦を制すると攻守を逆転させ、Vプレミアリーグの覇者へと復活する。


リーグ優勝を片手に迎えた全日本シーズン。

石井選手は一路、リオデジャネイロオリンピックを目指した。

迎えたOQT。
出場切符を懸け、古賀選手の調子が上がらない。しかも、キャプテン木村沙織選手が韓国戦で小指を脱却。

この危機的状況に奮起した石井選手。 

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途中出場の鍋谷選手とともにセットを奪い返す活躍を見せると、出場できないジレンマを吹き飛ばす活躍を見せ、リオへの切符を獲得。

だが、リオでは本領発揮とは言えず、チームは初戦の韓国戦で敗れ苦戦。

何とかアルゼンチンを下し辛うじて決勝トーナメントに駒を進めるも準々決勝は強敵アメリカ戦。石井選手は長岡選手と並ぶ13得点を上げ奮戦するも、ストレートで敗退。



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ほろ苦い初のオリンピック出場は終わった。


余韻に浸るまもなく開幕したVプレミアリーグ・2016/17シーズン。

久光はつきに見放された。

シーズン中盤を待たず、岩坂名奈選手が故障。その岩坂選手が復帰するや、ファイナル6ではエース・長岡選手が故障。
野本選手がレフト、新鍋選手がライトの新シフトと全員バレーで日立を撃破するも、ファイナルでは岩坂選手が負傷。水田選手が奮戦するも気力にも限りがあった。

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石井選手は初戦24得点、第二戦15得点を上げ奮戦しともにフルセットへ持ち込む意地を見せたがそこまでだった。

惜しくも優勝を逃した中、全日本は恩師・中田監督の下、新体制となった。

過去の実績は一旦リセット。
新たなスタートを切った。


中核として期待された石井選手だが、ワールドグランプリでは、古賀選手をはじめ、ライバルが結果を残していく中、石井選手は第三次ラウンド以降、アジア選手権まで出場メンバーから外れる。



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これまでベンチを外れたことのない苛立ちを耐え、チャンスはようやく訪れた。

膝の故障で登録を外れた古賀選手に代わり、グラチャンの出場機会を得た。



古賀選手とはこれからも抜きつ抜かれつのライバル関係は続いていくだろう。


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チャンスは来た。

後は結果で納得させるだけ。

同期の野本選手も追い付いてきた。

もう、後ろを振り返る余裕はない。


迷わず進め、とにかく前へ進むだけ。

東京オリンピックの主役になるために。



ただひたすら、前進あるのみ。