全日本シーズンが終わり、男子はそれぞれの戦場へと巣だった。
明るい未来を胸に。
女子は一足早くV-league開幕を迎えた。
今年は東京オリンピック前年ということで海外で活動する選手はいない。
男子は今年のワールドカップの活躍により、来年、メダルへの機運が高くなり、男女の立場は逆転した。
そうこうしているうちに東京オリンピックの全出場チームが決まった。
・東京オリンピック出場権獲得国
日本(開催国:世界ランキング7位)
(大陸間予選勝ち上がり国)
セルビア(世界ランキング3位)
中国(世界ランキング1位)
アメリカ(世界ランキング2位)
ブラジル(世界ランキング4位)
ロシア(世界ランキング5位)
イタリア(世界ランキング8位)
(OQT勝ち上がり国)
ケニア(世界ランキング19位)アフリカ予選
アルゼンチン(世界ランキング11位)南米予選
韓国(世界ランキング9位)アジア予選
トルコ(世界ランキング12位)ヨーロッパ予選
ドミニカ共和国(世界ランキング10位)北米予選
「彼女はバレーボーラー」でも触れたように、確実に日本が勝てそうなのはケニアとアルゼンチンぐらい。
あとは、同じぐらいなのがドミニカ共和国。
微妙なのがトルコと韓国。
それ以外は全て格上。
東京オリンピックはかなり厳しい大会となるだろう。
そんな中、全日本女子について気になることが幾つかある。
まず、気になるのは人事の遅さ。
男子はリーグで活躍した選手をすぐに抜擢するし、チャンスもすぐに与える。
また、無理と分かれば決断も早い。
初年度キャプテンだった深津英臣選手を翌年から柳田将洋選手に変えた。それも、何事もなかったかのように。
例えば清水邦広選手の全日本復帰。
当初、カナダとの親善試合では背番号21でスタート。その後、アジア選手権を経てゴーサインを与えるとワールドカップのメンバーに選出され、すぐさま背番号1に戻す決断の早さ。
それも、まだパフォーマンスがもうひとつと分かれば、大竹壱青選手を抜擢する切り替えの早さ。
小野寺選手は2017年当時、U-23。
男子は客観的に見て適切な人事を行うのに対し、女子は情を流されている部分も少なからずあり、それが足枷になっている部分は否めない。
全日本のメンバーは一応、リーグで活躍する選手を招集しているのだが、初年度は登録のみで終わることが多い。
そのため、人事にスピード感がなく、世界ジュニア選手権、アジア選手権の連続優勝と二大会連続MVPを獲得した石川真佑選手ひとりがようやく抜擢されたのみ。
アンダーカテゴリーには結果を出した選手が沢山いるのに、結果が出ていないシニアが蓋をして、進化の足枷になっている。
とにかく、動きが鈍い。
結果が出ていないのにも関わらず、だ。
バレーボールはジグソーパズルではない。
同じメンバーを集めても、相手が進化しており、前年の続きにはならない。
コンディションもあれば、リーグの結果、勢いを利用しないと勝てない。
選手がピークの時の抜擢しないと、活躍出来るものもできない。
では、2019年の全日本メンバーはどうか?
宮下遥選手(岡山シーガルズ)
冨永こよみ選手(埼玉上尾メディックス)
佐藤美弥選手(日立リヴァーレ)
田代佳奈美選手(デンソーエアリービーズ)
関菜々巳選手(東レアローズ)
古賀紗理那選手(NECレッドロケッツ)
新鍋理沙選手(久光製薬スプリングス)
石井優希選手(久光製薬スプリングス)
内瀬戸真実選手(トヨタ車体クインシーズ)
鍋谷友理枝選手(デンソーエアリービーズ)
黒後愛選手(東レアローズ)
今村優香選手(久光製薬スプリングス)
長内美和子選手(日立リヴァーレ)
吉野優理選手(埼玉上尾メディックス)
東谷玲衣奈選手(デンソーエアリービーズ)
中川美柚選手(久光製薬スプリングス)
石川真佑選手(東レアローズ)
宮部愛芽世選手(金蘭会高校)
岩坂名奈選手(久光製薬スプリングス)
荒木絵里香選手(トヨタ車体クインシーズ)
島村春世選手(NECレッドロケッツ)
奥村麻依選手(ナコンラチャシマ)
渡邊彩選手(トヨタ車体クインシーズ)
入澤まい選手(日立リヴァーレ)
芥川愛加選手(JTマーヴェラス)
井上琴絵選手(CSMブカレスト)
小幡真子選手(JTマーヴェラス)
山岸あかね選手(埼玉上尾メディックス)
※赤字はワールドカップ出場選手
※青字はネーションズリーグ・モントルー出場選手
※茶字はアジア選手権もしくは世界ジュニア選手権出場選手
久しぶりに日本のバレーボールの歴史の中で男子が女子を逆転した。
いや、厳密には初めてかもしれない。
・全日本男子成績
ネーションズリーグ2019 7勝8敗
アジア選手権2019 6勝2敗 3位
ワールドカップ2019 8勝3敗 4位
21勝13敗
・全日本女子成績
ネーションズリーグ2019 7勝8敗
アジア選手権2019 6勝1敗 優勝 *Bチーム
ワールドカップ2019 6勝5敗 5位
*19勝14敗 (Bチームの成績含む)
*男女共通の国際大会のみでの比較。
ちなみにアジア選手権の成績を割愛すると、13勝13敗。
これではさすがにメダルは厳しい。
近年最低の成績だ。
これまで男子が女子を超えたと再三伝えてきたが、前述の通り、男子は勝つための具体的手立てがあるのに対し、女子はない。
男子は勝つための手立てが揃い、結果が出た。
女子は勝つための手立てがあっても弱い。
男子ほどビッグサーバーもいなければ、必ず決めてくれるエースもいない。
方向性が間違っているとは言わないが、目新しさが何もなく、手立てに差がついてしまった。
もし、これが敵を欺くための秘策ならともかく、そういう風には見えない。
また、こうも思っている。
石川祐希選手の活躍は、妹・真佑選手の活躍に刺激を受けているのかもしれない、と。
大会前、石川祐希選手は妹のことは触れないで欲しいとインタビューで答えた。
相当、背中を押されたことだろう。
後輩の西田有志選手が超大物としてセンセーショナルな活躍を見せられたりと、ウカウカしてはいられなくなった。
清水邦広選手の復活もある。
ポジションは違うが刺激になっている筈だ。
女子の立場は微妙だ。
なんとかラスト三連戦で6勝5敗と帳尻を合わせたが、少なからずファンは今の全日本女子を強いとは思っていない。
このチームをこのままにすることはもう無理だ。
人選もそうだが、まず、ヘッドコーチを迎えて首脳陣の血の入れ替えが必須。
男子はブランコーチが主導でここまでのチームを作り上げた。
女子はフェルハトコーチが去ってから、どうも結果が出ていない。
中田監督続投なら、違う血を入れるべきだ。
それも、全く違う視野と見識、そして実績のある。
ワールドカップにてリーダー不在発言があったが、今年はキャプテンも変えないと駄目だろう。
結局、チームを固めることに固執したやり方が仇となった。
セッターも毎年違う。
それも、リーグの結果が反映されていない。
勝ち癖のあるチームのセッターでないと無理だ。
キャプテンとセッターはシャッフル。
キャプテンは実績十二分の荒木絵里香選手か充実一途の小幡真子選手で良いと思う。
二人ともキャプテンシーは十分。
リーグで結果を出している田代、籾井、関、宮下選手の4名が中心となるべき。
リーダーが不在なのではない。
エースがいない訳ではない。
適正な人事と活用が出来ていないだけ。
それを認めないと、何も変わらない。
果たして、全日本女子は急展開の方向転換、それも180度違うフルモデルチェンジは可能なのか?
とにかく、結果が出ていない以上、大幅に変えない限り大きな進展は難しいだろう。
ここまで来たら見栄も外聞もない。
"自分たちは弱い"
"何が足りないのか把握すべき"
"他国の進化と現状を知るべき"
"対策に具体性を持つべき"
まず、そこからやらないと何も変わらないだろう。
分からなければ、人に頭を下げてでも教えを請うべき。
もう今年は、毎回"負けて悔しい"の言葉は聞きたくない。
女子は、文字通り背水の陣で臨むこととなる(続く)