今年の全日本は、これまでとは少し変わった人材登用となっている。
特に今年は複数のポジションをこなせるマルチプレイヤーの起用が目を引く。

その中でも特に異色の存在が、ミドルブロッカーながらサーブレシーブもこなせる
ミドルとサイドを自由に行き来できるデンソーならではのマルチプレイヤー。

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石井里沙選手。
Vリーグの中でも比較的、変則的かつ新しい試みを積極的に取り入れる同チームは異色の存在。

母校・八王子実践の先輩、鈴木裕子選手はアタッカーからセッターにコンバートされ兼用で活躍。

石井選手も八王子実践高校時代はセンタープレイヤーとしてインターハイ準優勝、春高ベスト8など活躍。高校時代、センターで活躍してVリーグ加入後、サイドアタッカーに転向した選手は多い。高田ありさ選手や迫田さおり選手も高校時代はセンタープレイヤー。

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石井選手もデンソー入団後はサイドアタッカーに転身し、2011/12シーズンからレギュラーを獲得。
この活躍が認められ、全日本シニアに初招集。2012年アジアカップに出場し、その翌年、ロンドンオリンピック終了後、新たにスタートを切った第二期眞鍋ジャパンの一員として参加。
モントルーバレーマスターズにも出場。

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しかし、すんなりとはいかない。
この前後、デンソーは浮沈の激しい時期でもあった。

力はあるのだが、新しいことを積極的に取り入れても成績にムラがある。
2012/13シーズン、チームは7位に沈み、チャレンジマッチに出場。
日立リヴァーレと1勝1敗ながら得点率で劣り、チャレンジリーグに降格の憂き目に遭う。
翌、2013/14シーズン、チャレンジリーグでは力の違うデンソーは17勝1敗の好成績で優勝。
パイオニアレッドウイングスとの対戦で連勝し、わずか1年でプレミア復帰を果たす。

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が、これも長くは続かない。
迎えた2014/15シーズンもプレミアでは苦戦、6勝15敗と最下位に沈み、再びチャレンジマッチへ。
PFUとのチャレンジマッチでは2勝し、なんとかプレミア残留を決めるも、状況は変わらない。

翌、2015/16シーズン、晴れてキャプテンに就任した石田瑞穂選手による新体制の中、開幕戦岡山シーガルズとの一戦をフルセットで下し白星スタートを飾るとトヨタ車体にもフルセットの末勝利し連勝スタート。シーズン中盤までは5~6位圏内におり、今年こそはファイナル6の期待も大きかった。
しかし、石田選手が故障で戦列を離れてからチームは失速。8勝13敗と前年を上回るも7位に沈んだ。
迎えたチャレンジマッチ、初戦をPFUブルーキャッツにストレートで敗れると、続く第二戦勝利こそ飾るも1-3でセット率で下回り、再びチャレンジリーグ降格の憂き目に遭う。

チームの状況が不安定な以上、石井選手も変化を余儀なくされる。

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当時のデンソーの泣き所にサーブレシーブがあった。
この状況を打開するため、サイドアタッカーだった石井選手は2015/16シーズンからミドルへコンバート。
しかも、サーブレシーブを行うミドルブロッカーというリーグでも数少ない珍しい存在となった。

初年度こそ成果は実を結ばなかったが、2016/17シーズン。
チャレンジリーグではやはり力が違う。

アタック決定率は上尾の丸山裕子選手と僅差の6位。
サーブレシーブに加わる回数こそ減ったものの、ミドルにサイドに変幻自在なプレイを見せる。
チームは19勝2敗でリーグ優勝し、これに大きく貢献。

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続くチャレンジマッチでは因縁のPFUブルーキャッツ。
初戦をフルセットの激戦の末下すと、続く第二戦では勢いの差でストレート勝ち。
デンソーはわずか1シーズンで再びプレミアに復帰する。

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そして、この結果により石井選手は2013年以来、4年ぶりの全日本復帰を果たす。

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さらに返す刀でデンソーは、黒鷲旗大会でも優勝。
両手に華の全日本復帰となった。

人生万事塞翁が馬という。
人間の吉凶・禍福は変転し、予測できない。

これだけ浮き沈みの激しい状況で、自らの浮上を予想していなかったかもしれない。
ただ、やるべきことをやり、成果を上げれば、人は見ている。
それを証明する結果となった。

既にアムステルダムの事前合宿に参加中の石井選手。
今回もサイドアタッカーとしての参加だが、どういった形で今日されるか?

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新生全日本の初戦は近い。
果たして、どんな戦いを見せるか、これまで以上に想像もつかない。
今はただ、持てる以上の力を出すだけ。

後は結果を持って、道を切り開くだけ。