男子は違うが、
女子は本当に危機的状況だ。 

それは勿論、ワールドカップとグラチャンが廃止されたことだ。

日本バレーボール協会側はワールドカップの廃止を否定しているが、火のないところに煙は立たない。


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日本のバレーボールは女子バレーにおける東京オリンピック金メダルという華々しい形でブームを呼んだ。

以後、日本の女子バレーボールは、東洋の魔女という幻想と闘いながら歩み、男子は後塵を拝してきた。今日まで日本のバレーボール界は女子主導で、世界ランキングを金で買っていた、と言ってよい程優遇されていた。


特に日本の女子バレーボールにおいて、ロサンゼルスオリンピック以降、30年以上も三大大会でメダル獲得のなかった全日本女子が何故、常に世界ランキング上位でいられたのか? それはワールドカップの日本開催という側面が大きい。

このワールドカップの廃止は、今後の女子バレーボールにおける世界ランキングへ確実に影響を及ぼす。

何故ならば、日本の恒久開催であるワールドカップにホスト国として出場するだけで、日本は世界ランキングポイントを与えられる。

しかしながら、1981年の銀メダル獲得以降、日本はただの一度もワールドカップでのメダル獲得を実現してなく、オリンピックへの出場権を獲得したこともない。

それがなくなるということは、全日本女子の優遇が一切なくなり、ネーションズリーグ、並びに世界選手権ないしオリンピックでの結果がどうしても求められることになる。

ある意味、これは全日本女子が依怙贔屓一切なくまっとうな立場で世界に挑む。ひいては、過去のFIVBへの貢献や実績が一切リセットされ、一から出直しとなることを意味している。


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そもそも、FIVBの日本依怙贔屓は行き過ぎだった。

日本を優遇するために、世界最終予選(OQT)と題しアジア枠以外でもオリンピックに出場する方法を作らせた、と言ってよい。
 
そもそも世界的に見たら、この仕組みがかなりいびつで不公平だ。

もし日本が欧州に編入されたら、恐らくオリンピック出場は至難の技だろう。
イタリア、ロシア、トルコ、ポーランド、オランダ、アゼルバイジャン、ブルガリア、ベルギー、ドイツなど世界トップクラスがひしめく世界屈指の激戦区で、欧州からの出場枠は狭き門だからだ。

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もし、日本が欧州に編入されたらこれらのチームに全て勝つなど至難の技で、オリンピックなど夢のまた夢となるだろう。


それはともかく、今後OQTもなくなり、アジア枠での出場を目指す場合、女子のオリンピック出場はかなり苦難の道だ。

まず、2015年までオリンピックへの出場権が懸かったワールドカップがなくなった場合、事前に出場権を獲得する手段が皆無となる。(日本有利なこのルールはほとんど機能しなかったが)

次に、オリンピックのアジア出場枠が一枠になった場合、ほぼ絶望的だ。

今の中国を破るのは至難の技。
仮にアジア二枠だった場合、ライバル韓国、そしてタイを蹴落とさないとオリンピックに出られない。

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今後、バレーボールのオリンピック出場枠がどうなるか、予想してみる。

現在、出場枠は12ヶ国。
これは変わらないかもしれない。

北中米…2枠
アジア…3枠
南米…2枠
欧州…3枠
アフリカ…2枠

アジア枠が3なら問題ないが、2になるとかなり厳しくなる。

北中米はアメリカ以外だと、ドミニカ共和国、カナダ、メキシコ、キューバ、プエルトリコなどがあるが、アメリカではバレーボールはマイナースポーツであまり力を入れてなく、プロリーグも存在しない。

よって、北中米の出場枠拡大は考えにくい。

増枠が確実な欧州。
ロシア、イタリアは既にトップクラス。
さらにトルコ、ドイツ、ポーランド、オランダなどがひしめく激戦区で、実力的にも3枠は妥当。
むしろ、少ないほう。


南米はブラジル以外はアルゼンチン、コロンビアぐらいで実力的にもさほど強くないので2枠が妥当。

アフリカ枠は、正直、オリンピックでは勝ち星配球係だが、カメルーン、ケニアなど日本の息のかかったチームが実力を付けており、いずれかつてのキューバのように脅威になる可能性を秘めている。

とはいえ、2枠でも現状、多いほう。


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問題はアジアが3枠確保出来るか、欧州が増枠するかだ。

苦労して予選を勝ち抜いても、欧州4チーム出場なら、オリンピックでのメダル獲得はほぼ絶望的に近い。

アジア枠が3枠なら、日本は中国を除く、韓国、タイやチャイニーズタイペイ、カザフスタン、オーストラリアあたりと出場枠を懸けて闘うこととなりそう。

これが現実的な見方だ。



実はワールドカップやグラチャンがなくなっても、全日本男子の活動自体はそこまで影響はない。
 
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そもそも、日本のバレーボールにおいて男子は日陰者で、これまで結果も伴わず、ワールドカップやグラチャンを除くと四大大会への出場すら出来なかったりした過去がある。

前回の世界選手権もイタリア開催だったため、日本開催だった女子とは違い、予選を勝ち抜いて出場している。


また、女子とは事情が異なるのは、アジア枠。
 
女子と違い、アジアのライバルはイラン、オーストラリアぐらいで中国、韓国はさほど強くなく、オーストラリアは今や勝てないチームではなくなった。

このまま全日本男子が精進を続ければ、次のパリオリンピックも夢ではない。


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オリンピック出場権のアジア枠が3なら、今の全日本男子なら確実にパリオリンピックに行けるだろう。

だから、同じアジアでも中国、韓国、タイという強敵に囲まれた女子とは事情が違うのだ。



ただし、男子にも勿論、大きな弊害がある。

それは人気面。

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痛手は全戦生中継のワールドカップやグラチャンがなくなること。人気・収益の面でブレイクするチャンスを失うだろう。

もし、2019年のワールドカップがなかったら、全日本男子の大活躍も、現在の躍進ぶりもアピールされなかっただろう。

それでも大ブレイク出来なかったのは、日本バレーボール協会と報道各位との関係が円滑でなかったこととされているが、あれだけの活躍をしたのだから、日本中が大熱狂してもおかしくなかった筈である。

つくづく商売下手である。 


とにかく、これから日本で行われるFIVBのバレーボール大会は、ネーションズリーグの幾つかあるラウンドのうちのひとつだけで、世界選手権やオリンピックに出場するには予選を勝ち抜かないといけない。

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また、4年サイクルも大きく変わる(予想)


・オリンピックイヤー:
ネーションズリーグ、オリンピック

・大陸間大会(アジア選手権):ネーションズリーグ:世界選手権予選

・世界選手権イヤー:
ネーションズリーグ、アジア競技大会、世界選手権

・オリンピック予選イヤー:
ネーションズリーグ、大陸間大会(アジア選手権)、オリンピック予選


こうしてみると、この方がかなりスッキリしているが、日本開催が著しく減る分、テレビ中継が少なくなり、結果を出さない限り存在そのものが忘れ去られる可能性を秘めている。

また、ワールドカップとグラチャンの廃止が現実のものとなれば、テレビ局のねじれ問題も解消され、世界選手権を抱えるTBSの独り勝ちとなる。


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つまり、2022年以降、ワールドカップとグラチャンが廃止された場合、日本のバレーボールは全くの別世界となる。

メリットもある。

日本開催で日本が負担していた開催費用、各国の移動、宿泊費、莫大な放映権料など赤字の大多数を担っていた部分がなくなる。

また、東京オリンピックを見込んで作った有明アリーナの莫大な借金もあり、この部分が重くのし掛かったというのが現実的な見方という側面もある。


いずれにしても、東京オリンピック後にワールドカップとグラチャンが本当に廃止されれば、日本のバレーボールの景色と方向性は著しく違う方向へ進むだろう。

果たして、現実はどうなるか?
今後の動向に注目したい。